NHKは受信料を「受信料という名の特殊な負担金」[*1]と解すべき、との考えに従っている。総務省も同様の表現をしている。ただし、なぜ負担金という表現を用いるべきかの、誰もが納得できる詳しい説明をしていない。「分担金」? 、はて何故「分担金」という言葉を使う必要性があるのだろう。かえって、話を複雑化し、言葉のすり替えによって問題の中心から、目をそらしている、印象を受ける。
そこで、このページでは、こ問題を取り扱う。
まず、放送法64条にも、総務省施行規則にも、「受信料」という文言が使われており、「負担金」という文言は見当たらないが。なぜ、NHKは「負担金」という言葉を使う必要があるのか、考察してみた。
出来るだけ多くの人の理解が得られるように、ここでは、寸劇の形式で話を進めたい。場面は、NHKの委託業者が、ある家庭を受信契約を求めて訪問したところから始まる。
「こんにちは、NHKです。テレビの受信契約をお願いに来ました。
「うちは、テレビはあるけど、NHKは見てないので、契約はしませんよ。」
「NHKの番組を見ても、見なくても、テレビがあれば契約が必要なです。」
「それはちよっとおかしいわね。うちはねテレビがあっても、NHKの番組を見てなのよ。そうするとうちはNHKからなんのサービスも受けていないのに、お金だけ払えってこと。」
「奥さん、法律でそう決まっているので、契約してもらわないとだめなんです。」
「法律でそう決まっているからって、NHKは何もしてないのに、お金だけとるってどうゆうこと。馬鹿じゃないの。」
「しかし、法律そう決まっているんですよ。見るとか、見ないとかに関係なく、テレビがあれば受信料を払わなくてはならないのです。」
「あんた、よく考えてみなさいよ。あんたがお店に入って、何も買わなかったとするわね。それで、お店を出るとき、店員からお金を払えと言われたら、どう思う。あんたは店では何も買わなかったしサービスも受けてないのよ。それで、店員からお金を払えって言われたら、この店おかしい、どうかしているって、思わない。今時、ぼったりバーでもそんなことしないわよ。」
「そりゃまあ、確かにそうなんですが。法律で決まっているので、もし、契約しないと、裁判になりますょ。」
「ふざけたこと言うわね。何のサービスも受けてないのに、料金だけ払えなんて、どこの世界にあるのよ。とっと帰りな。」
「じゃ、きょぅのとこは一応帰ります。また伺いますので。よろしくお願いします。」
「何度きても、同じよ。うちは何のサービスも受けてないのに、お金だけ払うつもりはありませんから。裁判でもなんでもしたらいいじゃありませんか。」
さて、かの委託業者の担当者、帰社後、このやりとりを上司に報告する。報告された上司はこの顛末を、更にNHKの担当者に報告する。担当者から報告を受けた幹部は、協議する。
「確かに、なにもサービスを受けていないのに、料金を取るのは、一般常識からいっても、納得できることではなですね。何かいい知恵はないでしょうか。」
「それでは、受信料という言葉のかわりに、負担金という言葉にしたらどうでしょう。サービスの対価だと料金になりますか、受信機設置に対する負担金とすれば、サービスを受けるか、受けないにかかわらず支払の義務が生じる、と説明するのです。」
「それはいい考えですね。放送法64条には、『受信設備を設置した者は~契約しなければならない』と規定しています。この規定には、『放送を利用する者は~契約しなければならない』となっていません。ですから、受信契約の勧誘の際には受信料ではなく、負担金だとして説明して、納得を得るように努めてもらうのです。」
「しかし、我々NHKからそれを言い出すのは、いかにも姑息な印象を与えてしまうのではないか」
「そうですね。それでは、それを隠すため、何かの会合で、誰か適当な委員の先生にお願いして『NHKの受信料には、負担金という性格がないこともない』と発言してもらうのです。」
「そりゃいい、そうしよう。頼める先生は、いくらでもいる。」
かくして、テレビを設置した者から、テレビを見る、見ないにかかわらず、利用料ではなく、負担金としてお金をいただく、というように説明することになる。
ここで、寸劇は終わりとしよう。もちろん、この寸劇はフィクションであり、筆者の創作である。しかしながら、これを荒唐無稽の作り話と考える前に、この言葉が生み出された時代背景をみてみよう。そうすると、上記の寸劇のように考えた方が、なぜNHKがこの「負担金」という文言を使いたいかの合理的な理由を推定できるだろう。
「負担金」という文言が最初に使われたとされるのは、今から約45年前の昭和39年、何かの調査会であるとされる。NHKの受信料は「受信料という名の特別な負担金と考えられる。」との報告からとされている。NHKの意向を受けて、この調査会が「負担金」という発言を行ったのか、あるいは、調査会の発言を受けて、これを自らの営業に利用したかは判断できない。しかしながら、調査会がこの「負担金」という文言を作り出す必要性を感じない。「負担金」という文言を使う実質的な必要性はNHKにあるのだ。昭和39年頃のNHKと総務省の癒着を考えても、NHKの意向で、調査会が発言したと考える方が合理性がある。
昭和39年とは、東京オリンピックが開催された年である。おそらく、テレビが爆発的に普及したころであろう。これに伴って、NHKの受信契約義務所帯( つまりテレビ設置所帯)の数も爆発的に増え、契約締結に向けた営業活動が盛んに行われたことであろう。それに伴って、上記寸劇の事態か多発したと容易に推定できる。
つまり、「うちは、NHKを見ないので、受信契約をしません」という事態である。
これに、どう対処するか。「NHKの放送を見なくても」料金を徴収できる、「理屈」が必要である。「料金」ならば「何らかの利益、サービス」を受け取っていなければならない放。しかし「NHKの放送を見ない」と主張する所帯に、「料金」を請求するのは無理がある。「テレビを見る、見ないに関係なく、テレビを設置することに対する負担金」としてお金を頂く、ということにするほか、これに対処うる方法が見つからない。かくして、「受信料」ではなく「負担金」を使うようになる、と筆者は考える。
また、報告書の「受信料という名の特別な負担金と考えられる」の文言は、
「受信料」= 「負担金」 とは言っていない
「受信料」は「負担金」 と言えるかもしれない、と言っているに過ぎない
前述のように、放送法64条、放送法施行規則にも「受信料」という記述はあるが「負担金」という文言はないのである。つまり、法律にない文言を使い、後に問題提起された場合の逃げ道として、
「受信料」= 「負担金」 との表現は避け
「受信料」は「負担金」 かもしれないと言っている
まさに、どうとでもとれる役所の答弁の代表表現と言える。この曖昧な文章が報告、発言された事実はあるようだが、それによって、放送法64条、放送法施行規則の文言が改訂されたということはない。故に、NHKは、ただ、このような発言があったということを主張しているに過ぎず、法的になんら効力をもたない。
にもかかわらず、NHKは、「負担金」という考え方を営業活動に用いている。また、総務省の国会答弁でも、堂々と「受信料という名の特別な負担金と考えられる」との見解を表している。NHKの利益を代弁するかのような発言である。なぜ総務省はNHKの利益に叶うような発言をする必要があるのか、総務省にとってNHKは非常に魅力的な「天下り先」に他ならないからだ。今は世間の目が厳しく、総務省から直接天下りは無いかもしれないが、間接的に、また、世間の関心が薄まれば、即始めるに違いない。
劇中にも出てきたが、『受信料』を『負担金』にかえても、NHKの番組を利用していない者からも、お金を取ることに変わりはない。そう、事態は全く変わってはいないのだ。言葉を『受信料』から『負担金』に変えることによって、問題の本質から、目をそらし、一見納得を得たように誘導しているのだ。これが、だましのテクニックと呼ばれるゆえんである。問題の本質は受信料制度にあるのではなく、受信契約制度にあるのだ。寸劇の内容の真偽はともかく、NHKが「負担金」という言葉を採用していることは、事実なのだ。
NHKは「負担金」という文言を、テレビを見る見ないにかかわらず、設置者から公平に負担していただく金銭、というような意味で使っているように思われる。つまり、「放送を利用した対価ではなく、設置に対する負担金」ということにしたいようだ。「テレビを見る見ないにかかわらず」という考えは、放送法64条1項の「受信設備を設置した者は~契約しなければならない」から導き出しているように思われる。確かに、この条文には、「放送を利用する者」となっておらず、「受信設備の設置者」となっている。おそらく、この解釈のもと、「見る、見ないにかかわらず」設置に対する負担金という考えは、一見納得のいく説明のように見える。
しかし、たびたび、説明を繰り返すが、そもそも、放送法64条の第1項の規定というのは、次のような、事情で生まれたものなのだ。
放送法64条1項では「受信設備を設置した者は~契約しなければならない」と規定している。本来ならば、「放送を利用する者は~契約しなければならない」とすべきなのだ。ところが、放送は電波という媒体を介しておこなわれている。この電波は、一度発射されると、どこの誰が受信しているか判別することができなかった。放送を視聴している者を特定できないという特殊性のため、「受信機を設置(=利用者)したものは~契約しなければならない」と間接的に、利用者を推定するよりほかに、利用料を徴収する方法がなかったのだ。この利用者を間接的に推定しているため、さまざまな、弊害が現れ始めている。この間接的な規定のため、「放送を視聴していない者からも、受信料を徴収しているかもしれない」という、不公平を内在しているのだ。利用者を特定でない以上、この間接規定は、仕方のないことと容認する以外方法がなかったといえる。
この放送法64条1項の記述「受信設備を設置したものは~契約しなければならない」という表現が、「負担金」という文言を生み出す一因にもなっている。本来、「NHKの放送を利用する者は~契約しなければならない」となるべきところを無視して、NHK及びNHKの意図を汲んだ総務省は自分たちの都合の良いように、解釈を捻じ曲げ「負担金」なる文言を作り出した。
「NHKの放送を利用する者は~契約しなければならない」となっていれば、NHKの営業員が来たとき「うちは、NNKの放送を見ないので、契約しません」「まいどありー、またーお願いします」で、話は決着するのだ。
NHKは「NHKの放送を利用しているにも関わらず、契約しない世帯がいる」と、主張するかもしれない。しかしながら, 技術革新はすさまじく、今や、どこの誰が放送を利用しているか、特定できるようになった。そうすると、「受信機を設置(=利用者)したものは~契約しなければならない」と間接的に利用者を決めていた規定は、「放送を利用する者は~契約しなければならない」と、本来の文言に改めるべきなのだ。実際にNHKを利用している者を判別し、その者から利用料を徴収することこそ本来の姿なのだ。。
ここにこそ、受信契約、受信料問題の核心があるのだ。上記で、本来ならば、「放送を利用する者は~契約しなければならない」とすべきなのだ、といったが、この文言さえ、不必要なのだ。なぜなら、テレビメーターの導入が可能になった今日、料金を払わなければ、提供を止めればいいだけの事なのだ。NHkの放送を利用している者は、料金をはらう。NHKの番組を利用していない者は、料金を払わない。至極、当たり前のことである。
しかしながら、NHKは、「分担金」という概念を持ち出し、受信料問題を更に複雑化し、問題の本質である、受信契約制度から目をそむかせようとしている。
次の、図式を見てもらいたい。
NHKの放送利用者 → 受信料の支払者
本来の姿はこのようになるべきなのだ、ところが放送が電波という特殊な媒体を介して行われることから、利用者を特定出来なかったので、間接定に、設置者を利用者と推定しているため、放送法64条1項で次の図式のように決めている。
テレビの設置者 → 受信料の支払者 …(注1)
* 分かりやすくするため、図式は簡略化されています。詳しくは、各柱脚を参照。
今日、テレビメーターの導入が可能となって、どこの、誰がNHKの番組を利用しているか、判別できるようになったのだから、正しい方向としは、下の図式、つまり
NHKの放送利用者 → 受信料の支払者
とすべきなのだ、ところが、次の図式のように説明しようとしている。
テレビの設置者 → 負担金の支払い者 …(注2)
NHKは、「公共放送NHK存続のためテレビを設置のみなさまから、テレビを見るか、見ないにかかわらず、公平な負担金という性格のお金のお支払いをお願いしております。」と説明したいのだろう。そう、テレビを「見るか、見ないかに関わらず」という言葉を使いたいがために「負担金」という言葉を選んだと解すべきだ。
もし、負担金という言葉を使うのであれば、テレビのあるなしに関わらず、国民全体に等しく課すのが、適当である。しかし、実際にはテレビを設置していない者には、受信料(=負担金)を徴収していない。テレビを設置していない者は、NHKの放送を利用していないことが明白に分かるからである。すると、NHKの放送を利用していない者は、受信料(=負担金)の支払義務はないことになる。
そこで、次に問題になるのは、テレビを設置しているが、NHKの番組を利用していない者はどうなるか、ということだ。前述のように、(テレビを設置していない者=)NHKの番組を利用していない者は、受信料の支払義務はないから、テレビを設置しても、NHKの番組を利用していない者も、受信料の支払義務はないことになる。受信料の支払義務が生じるか否かは、NHKの番組を利用するかどうかに係ってくることになる。
テレビを設置している者が、「NHKの番組を利用しない」と言っても、隠れてみているかもしれない、と思われ人がいるかもしれなすが、その問題は、テレビメーターを導入することによって、解決されので心配はご無用、と申し上げたい。
これまで説明来たように、放送法64条、放送法施行規則にも明確に、「受信料」という文言か使われている。「負担金」なる文言はない。NHKは自分たちに都合の良いように、法を解釈し、自分たちの都合の良いように、「負担金」なる文言を作り出し、国民を欺こうとしていることは明白だ。
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(注1) 受信設備の設置者 → 契約義務者(=受信料の支払者
(注2) 受信設備の設置者 → 契約義務者(=負担金の支払者
[*1]参考年表
1953(S28)年 日本テレビ開局
1955(S30)年 TBSテレビ開局
1960(S35~)年代 各テレビ局開設
1964(S39)年 臨時放送関連法制調査会の答申書に(負担金の記述あり)
東京オリンピック開催