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E
= mc2(イー・イコール・エム・シー
じ じょう、)とは、
エネルギー E = 質量 m × 光速度 c の2乗
という、質量とエネルギーの関係を示す等式を指す。
この式は「質量とエネルギーの等価性」とその定量関係を表す。アルベルト・アインシュタインにより、1907年に発表された。
この式は状況を限定せずに成り立つとされ、多くの場面で「『物質とエネルギーが可換』であることを意味する式」という風に解説されている。
すなわち
・物質あるいは物体と呼ばれるものが消失して相応量の熱や光が発生することがある。逆に熱や光を元に物質/物体が発生しうる。
・熱や光の量と物質の量の和(厳密に言うなら一方を他方に換算したときの和)は変化しない。
内容
特殊相対性理論は、「物理法則は、すべての慣性系で同一である」という特殊相対性原理と、「真空中の光の速度は、すべての慣性系で等しい」という光速度一定の原理を満たすことを出発点として構築され、結果として、空間3次元と時間1次元を合わせて4次元時空として捉える力学である。運動量ベクトルは、第0成分にエネルギー成分を持つ4元運動量
pμ(または p)として扱われ、運動方程式は
この式は、質量とエネルギーが等価であることを意味する。反応の前後で全静止質量の和が
Δm だけ減るならば、それに相当する Δmc2(2乗 )のエネルギーが運動、熱、あるいは位置エネルギーに転化されることになる。
なお、これは原子核反応に限ったものであるという誤解があるが、実際には原子核反応の観測により実証されたというのが正しい。質量とエネルギーが等価であることは、原子核反応に限った話ではなく、全ての場合において成り立つ。例えば、電磁相互作用の位置エネルギーに由来する化学反応では、反応の前後の質量差は無視できるほど小さい(全質量の 10の−7乗 % 以下)が、強い相互作用の位置エネルギーに由来する原子核反応ではその効果が顕著に現れる(全質量の 0.1 - 1 % 程度)というだけの話である。水力発電のような重力の位置エネルギーに由来する場合であっても、質量とエネルギーの等価は成り立つ。
8.9875517873681764×10の16 乗J と等価
2.4965421632×10の10 乗kWh と等価
21.48076431
Mt のTNTの熱量と等価
広島に投下された原子爆弾で核分裂を起こしたのは、爆弾に詰められていたウラン235(約50 kg)だが、実際に消えた質量は 0.7 g 程度だったと推測されている。一方、反物質が通常の物質と対消滅反応すればその質量が100%エネルギー変換されるため、核反応とは比較にならない莫大なエネルギーが発生する。逆に対生成で物質や反物質を得るにはそれだけの莫大なエネルギーを要する事になる。
特殊相対性理論の中でも本項の式が特に有名であるため、十分に理解されないまま使われることも多い。例えば前述の通り、反応の前後で全静止質量の和が
Δm だけ減るならば、それに相当する Δmc2 のエネルギーが運動、熱、あるいは位置エネルギーに転化されると言うこと、或いはその逆を表すのがこの関係式であるが、それ以外のいかなる場合も E = mc2 であるとして特殊相対性理論を誤って解釈したり、その誤った解釈を元に特殊相対性理論は間違っていると主張されたりすることも少なくない。
質量とエネルギーの等価性は「宇宙に始まりがあるのなら、どうやって無から有が生じたのか?」という、ある意味哲学的な問題にも、ひとつの解答を与える事となった。宇宙の全ての重力の位置エネルギーを合計するとマイナスになるため、宇宙に存在する物質の質量とあわせれば、宇宙の全エネルギーはゼロになるというのが、解答である。