放送法64条1をもう一度見てみよう
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であって、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第126条第1項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。 |
上記、赤文字で示したように「受診設備を設置した者は ~ 契約しなければならない」とある。つまり、受信契約をしなければならないが、受信料を払わなくてはならない、とはなっていないのである。64条の他の項にも、受信料を払わなければならない、との規定はない。テレビがあれば、受信契約をしないと64条1項違反となるが、受信契約した後で、受信料の不払いをしても、法律違反にはならない。その規定がないのである。もっとも、今のところ受信契約をしなくても、罰則がないから、罰せられることはない。
しかしながら、受信契約をしないと、裁判を起こされ、判決により契約を命令される、危険性はある。そして、受信料を支払うことになる。
受信契約した後で、受信料を払わない場合も同じだ。裁判を起こされ、支払を命令される。
だが、契約をしないで裁判を起こされるのと、契約した後で受信料を不払での裁判を起こされるのとでは、差が生じるので注意をしなければならない。契約をしないで、裁判を起こされると、テレビを買ったときから、裁判を起こされ、その判決確定た時までの期間の受信料を支払わなくてはならないことになる。それに反して、契約はしたが、受信料不払いで裁判を起こされた場合は、最長5年間分を支払うことになる。これは最高裁の判決で確定している。受信料の不払いは時効の適用を受けて最長5年で、確定している。
いずれにしても、NHKは受信契約不履行、受信料不払い、に対しては、裁判を起こして裁判所の判決を得なければ、受信料を得ることはできない。これは、NHKにとって非常に時間と手間がかかる煩わしいことになる。受信契約不履行者がおおよそ、1,000万件、契約はしたが受信料不払い者はおよそ、100万件。まさに膨大な数なのである。受信料を得るには、今の放送法の規定のもとでは、それに対して裁判を起こし、勝訴する必要がある。
そこで、NHKは放送法64条1項を次のように改定しようとしている。
「受信設備を設置した者は ~ 契約しなければならない」を
↓
「受信設備を設置した者は ~ 受信料を支払わなければならない」に
さらに、これに罰則まで付けようとしているのである。
もし、これが認められれば、テレビを買うと、NHKに対する支払い義務がたたちに生じる。 NHKの職員、あるいは委託員がお宅を訪ねて、受信料の支払を求められた場合、これを断ると罰金を払わされることになる。NHKはいちいち裁判で、契約を迫り、また受信料の支払を求める事から解放されることになる。ただでさえ、不公平を抱える放送法64条1項を、更に改悪しようとしているのである。
もう一度、NHKがしようとしていることを、分かりやすく示したいと思う。
現行の放送法64条1項は、次の通りである
受信設備を設置した者 ~ 契約しなければならない
テレビメーターの導入が可能になった今、本来の形は次のようになるべきなのだ
放送を利用する者は ~ 契約しなければならない
ところが、NHKは、次のように変更しようと、各方面に運動している。
受信設備を設置した者 → 受信料を支払わなければならない(罰則付き)
NHKは、「受信設備を設置した者」はそのままに、「契約義務」を「支払義務」にしようとしていのだ。
もう一度、放送法64条1項を見てみよう。「正確に」表すと次の図式になる。
受信設備を設置した者 → 契約義務者(裁判確定後→受信料の支払者)
つまり、放送法64条1項では「テレビの設置者」は「契約義務者」であって、「受信料の支払義務者」になっていないのである。このため、NHKは受信料の支払をもとめることを確定させるためには、裁判を起こさなくてはならない。これは、NHKにとってはすごく厄介なことであろう。契約拒否者、契約はしているが受信料の不払い者、これらを最終決着するには、いちいち裁判で判決をもとめ、裁判が確定して初めて支払がみとめられる。その数たるや、おそらく1,000万件に近い、気の遠くなる数である。
そこで、いちいち裁判を起こさなくても、支払を求める事ができるようにするために、
受信設備を設置した者 → 受信料支払義務者(罰則付き)
のようにしたがっているのだ、「罰則付き」で。もし、これが実現すれば、受信料の支払は、最終的には裁判確定後になるが、その前に罰金の支払いを求められるため、不払いは減少するであろうことを期待している
しかし、これは本来の形からは、大幅にずれることになる。本来の姿とは次の式である
放送の利用者 → 受信料の支払義務者
さて、このページがなぜ「泥棒に追い銭」という名前が付いたかを説明しよう。
NHKが改定を迫っている、式をもう一度見てみよう。
受信設備を設置した者 → 受信料支払義務者(罰則付き)
この式の前半部分、「受信設備を設置した者」の中には、不公平が内在している。その説明文をもう一度見てみよう。
放送は電波という媒体を介しておこなわれている。この電波は、一度発射されると、どこの誰が受信しているか判別することができなかった。放送を視聴している者を特定できないという特殊性のため、「受信機を設置(=利用者)したものは~契約しなければならない」と間接的に、利用者を推定するよりほかに、利用料を徴収する方法がなかったのだ。この利用者を間接的に推定しているため、さまざまな、弊害が現れ始めている。この間接的な規定のため、「放送を視聴していない者からも、受信料を徴収している」という、不公平を内在しているのだ |
このように、「受信設備を設置した者」という中に、不公平を残したまま、更にこれに罰則まで設けて、罰金を払わせようとしているのである。まさに、放送法64条1項を「泥棒に追い銭」のごとく改定を図ろうとしているのである。
なぜそんなことをするか、もちろん国民のためでない。NHKは、公平、中立、公共、災害など、耳にやさしい言葉を並べて、受信料制度の必要性を宣伝してきたが。これまで、各ページで説明したように、NHKの放送の実生活での必要性は、トイレットペーパーと比べられるほどしかないのだ。だから、その本当の狙いが他にあるとおもわざるを得ない。ひとつは、政府がコントロールできる放送局を確保するため。また、総務省が天下り先を確保するため。さらに、NHKが自己の組織を維持し、既得権益を守るためであろう。
だから、「泥棒に追い銭」になるような改悪には断固反対の意思を示すことが大切なのだ。