天下り問題
「2者の癒着と1者の無関心」の2者とは、NHKと総務省であり、1者は政治家を指す。
さすがに、今は総務省からNHKへの直接な天下りは、表面上は表れていないようだ。しかしながら、NHKには、子会社・関連団体ともいうべき関連企業を非常に多くかかえている。これらの企業・団体の取締役とうは、氏名が公表されているので、これまた、総務省から直接、取締役に天下りは世間の目がはばかれるため、ないかもしれないが、時間差、迂回を経て、これらに天下りしても、その実態の把握は難しいのが実情だ。しかし、天下りへの考え方がゆるかった以前は、まさに、総務省にとって、「垂涎(すいぜん)」の天下り先だったのである。また、総務省から天下りを受け入れることは、NHKにとっても自身の組織の維持拡大に大きな役割があるのである。
そもそも、天下りに関して言えば、総務省を上げる前に、前述のように、NHKが多くの子会社・関連企業を抱えており、それが自身の天下り先になっているのである。NHKの天下りについては、別のページで取り上げる機会があるだろう。
総務省の天下り先は、NHKに限らず、他の放送局、電話会社、その他総務省が管轄する企業・団体への天下り先は、数知れない
天下りに関して言えば、まだ記憶に新しい実例がある。2017年の春先から、連日連夜、各テレビ局を賑わしたニュースがあった。このニュースの事を「そば家」のメニューになぞらえて「もり」や「かけ」でもあるまいに、という言葉が飛び交った。まだ、日もそれ程経っていないので、多くの読者の方も覚えていることだろう。
さて、ここに登場する「もり」とは、大阪府豊中市に小学校を開講しようとしていた、「森友学園」、「かけ」とは、愛媛県今治市に獣医学部を開設しようとしている、「加計学園」である。筆者が、取り上げたいのは、「加計学園」のほうに関わってくる、前の文部科学省事務次官の前川喜平氏である。この前川喜平氏は文科省の天下り斡旋問題のため引責辞任していた。この、前川氏、当時総理大臣であった安倍晋三氏に反旗を翻し、首相の不利となる発言をし、国会でも証言した。
また、2017年秋に発覚した、商工中金の「不正融資」事件。このことに関して、読売新聞、2017年(平成29) 10月28日号3面社説に「商工中金・公的金融の意義を問い直せ」と題して、次のような記述がある。「 ~ 商工中金には、安達圏祐社長(元経産次官)
をはじめ所轄官庁のOBが天下りしている。政府系金融機関のトップや役員を官僚OBの”指定席”としてきた慣行を改めねばならない。~」
この二つのは、氷山の一角と考えるほうが、合理性がある。そもそも、官僚の人事方法に、天下りが無くならない原因の一端があるといえる。例えば、入省の同期の者が、官僚トップの事務次官になると、同期の者は、その役所から去る。という慣例があるのだそうだ。そうすると、その者の受け入れ先が必要となる。だからこの天下り問題とは、単に総務省の問題だけでなく、すべての官庁に共通している問題なのである。また、それとは別に役所を自主退職する場合でも、天下りは一般的に行われている。そして、役所での地位によって、より条件のいい、天下り先を確保できるのである。一般職より係長、係長より部長、部長より局長、局長より次官、位が上がれば上がるほど、権限の拡大とともに、天下り先もよいものになる。
総務省が、NHKを天下り先として魅力的と考えることを、理解するには、まず、天下りの仕組みを理解しなければならない。天下りが成り立つためには、天下りを出す側、天下りを受け入れる側、双方に何らかの利益があることが、前提条件になる。ある企業が役所から天下りを受け入れる場合、その天下りの者は、役所が発注する工事を、その企業に受注させるという、土産をもってくるのが一般的である。建設、建築、土木、などの公共工事がそれにあたる。また、監督官庁から、天下りを受け入れる場合は、金銭的利益ばかりとは限らない。つまり、監督官庁は、その管轄する業務において、数々の許認可権をもっており、その許認可がスムーズに行えることが、間接敵に利益につながりを持つのである。学校の設立、病院の設置とうがこれにあたる。今まさに、問題となっている「もり・かけ」はこの類に当たる。
さて、総務省からNHKに天下る場合の「土産」は何になるのか。
その前に、もう一度、一般的な例を見ておこう。前述のように、国土交通省から民間の建設会社に天下りした場合、「公共工事」という「土産」を持ってゆくのが一般的である。建設会社にしても、人だけ押し付けられて、仕事はもらいないというのでは何の得もなく、ただ損をするだけだ。それでは天下り制度そのものが成り立たない。たから、天下りには「公共工事」という「土産」を持たせるのである。そこで、総務省からNHKへの「土産」が問題となるのである。
さあ、NHKの問題である。NHKは民間会社と違って、企業としての「利益」を出さなくてもよい。むしろ、利益を出すことを禁じられている。これは、企業にとって全く特別なことと言わなければならない。民間企業は株式会社であろうが、個人商店であろうが、日々競争の中で、活動している。利益が出なければ、倒産か消滅である。皆、必死になって働いている。ところが、NHKは、「利益」を出す必要がない。「ああー、なんて、いい会社なんだろう」。企業が利益を出さずに存続して行ける、なんと素晴らしいことだろう。まるで夢のような話だ。いったい、そのからくりは何だろう。
実は、それを可能にしているのは、放送法64条1項の規定なのだ。NHKの言葉を借りて言うならば、「受信料という名の特殊な負担金と解すべき」という文言の中の、「負担金」を「税金」に変えて、「受信料という名の特殊な税金と解すべき」お金、のせいなのである。
NHKの生命線である、この「放送法64条1項」を変えさせない事が、NHKの組織の
維持、拡大のカギを握っているといってもよい。そのためには、監督官庁である、総務省をどうしても味方に付けておく必要があるのだ。つまり、NHK改革の本丸、放送法64条1項の規定「「受信機を設置した者は~契約しなければならない」を「放送を利用する者は~契約しなければならない」にあることは、このサイトでも機会あるごとに述べてきた。この改革をさせないように、総務省を味方にに付けておくことは、NHK存続の戦略情報に必要不可欠なのである。だから、NHKが総務省から、天下りを受け入れる場合、建設省の天下りのように、公共工事のような「土産」は必要ないのである。総務省とのパイプを確保することが目的なのだから。NHKの改革をしようとするような政治家の動向を、いち早く察知しそれを阻止することが、NHKにとって、もっとも殊勲のあることなのであるから。
そもそも、政府、与党がNHKを設立した理由は、国民に娯楽を与えるのが真の目的ではない。真の目的は、情報操作による思想統制である。戦前もNHKは存在した。政府の報道機関としてである。戦後、NHKは民主的な存在に移行したように見えるが、依然として政府与党の管理下から抜け出ていない。依然として、政府与党のコントロールできる報道機関として存続しているのである。政府与党がNHKを必要と考えれば、総務省もそれに従うであろう。政府与党はコントロールできる報道機関の確保、総務省は天下り先としてのNHKを必要とするのである。
政府与党はNHKの設立を、自身がコントロール出来る報道機関として確保するため、法律を制定した訳であるが、この規定が出来たのは、戦後まもなくのことである。その後の社会、技術の発展により、今や、NHKをコントロール出来ても、国民の思想統制が出来ると考える政治家がいるとは思えない。そうすると、政治家はNHKの存在を維持しようとする、強い思いは弱まり、徐々に、無関心に移ることになる。他方、総務省のNHKへの目的は天下り先の確保、これは依然として継続されることになる。
NHKを自身のコントロール出来る報道機関として確保できても、今日の状況の変化がそれを許さないことにより、政府与党にとって、NHKはお荷物になってしまった感がある。そうすると、政治家にとっては、NHKに対して更に無関心にならざるを得ない。
本来、この問題を解決するのは、国会議員の仕事である。法律を変えられのは、唯一国会だからである。しかしながら、NHK問題の核心・本質がどこにあるか、真に理解している国会議員が果たしてどれほどいるか、とても疑わしい。
例えば、ある国会議員が、選挙区の有権者から、NHKについての苦情を受けて、NHKの問題点を調べようとする。そうすると、まずNHKを所管する総務省に、NHKに関する資料を提出するよう求めるだろう。すると、その資料提供を求めた者に、何百ページに上る資料が提出される。まさに、その資料を見ただけで、意思がなえるほどの資料の束が届くのである。そのとき、まずその資料の部厚さ・多さに驚くことになる。そして、資料を求めた者が、その多くの資料を読破する情熱が続くかどうかが、第一の関門になる。
次に、その資料を読んで、何がNHK問題の核心か、あるいは、本質かを見付ける事が出来るかどうかが、次の関門である。おそらく、総務省から提出された資料から、NHK問題の本質を見つけることは非常に困難な事と思われる。何故か。次の例を見てみよう。
例えば、あなたが道に迷って、誰かに「このお店に行く道を教えてください」と言ったとする。このような場合、道を聞かれた人は、「次の角を右に曲がってください、しばらく真っすぐ行くと、左側に看板が見えます」などのように、質問に対して、短く分かりやすい表現で応えるのが、親切な対応と言える。
それに対して、この例を総務省から出るであろう資料の例に当てはめてみよう。
<ただし、文章がちょっと長くなるので、四角に囲まれた部分はとばしてもよい。>
「その店へ行くには、○○出版社の地図を買ってください。その出版社の本社は東京都新宿区西新宿1丁目1番地に在ります。 …中略… 「東京都」とは、旧東京府と旧東京市を廃止しそれらを統合する形で設置された行政機関です。第二次世界大戦中の1943年(昭和18年)7月1日、首都の行政機能を強化する目的から東京都制が施行され、終戦後の1947年(昭和22年)に地方自治法を施行したために、この(1943年の)東京都制は廃止されたが、「東京都」の名称と行政区域は変更していません。すなわち、東京都制によって、東京都の直轄とされた、旧東京市内に設置されていた区は、地方自治法施行によって特別地方公共団体たる特別区という名前を与えられて、市に準ずる権限を与えられたものの、一部の事務や徴税権は、東京都に引き続き留保されました。このため東京都庁は、今なお「23区を包括する市役所としての機能」と「県庁としての機能」とを併せ持っています。 東京都の議決機関は東京都議会です。 東京都庁舎(本庁舎)は長年千代田区の有楽町にあったが、1991年(平成3年)4月1日に新宿区の西新宿に移転した。移転に伴い、地方自治法に従って都条例も改正され、同時期以降、都庁所在地は新宿区となりました。都知事の執務室もそこにあります。 …中略… この出版の取締役社長は、山田太郎氏です。 …中略… 取締役とは、すべての株式会社に必ず置かなければならない機関でありまして。取締役会非設置会社においては、対内的に会社の業務執行を行い、対外的に会社を代表するものであり、取締役会設置会社においては、会社の業務執行の決定機関である取締役会の構成員です。2006年5月施行の会社法により取締役会の設置が原則として任意になり、機関設計により取締役の権限が異なるようになったことから、一義的な定義は困難になっています。 …中略… 同氏は昭和50年東都大学を卒業、同社入社、主に編集畑を歩き、創業者である父の後を継いで平成15年社長に就任しました。同社の年間売り上げ高は約2億円、従業員数200名の中堅出版社です。関連会社として、印刷所が埼玉県浦和市にあります。 …中略… この社の地図は見やすいという定評があります。ちなみに、日本における地図としては、江戸時代後期の伊能忠孝のものを上げる事が出来ます。伊能 忠敬は、延享2年1月11日(1745年2月11日) - 文化15年4月13日(1818年5月17日))は、江戸時代の商人・測量家である。通称は三郎右衛門、勘解由(かげゆ)。字は子斉、号は東河。寛政12年(1800年)から文化13年(1816年)まで、足かけ17年をかけて全国を測量し『大日本沿海輿地全図』を完成させ、国土の正確な姿を明らかにしました。 …中略… 地図の大きさは、A4版、200ページです。この地図の154ページ、D-5を参照してください。 |
さて、長々と、東京都、取締役、伊能忠孝などと説明して、いったいここでは何を問題にしてきたか、分からなくなった。読者が、これを読んで何を問題にしているのか分からなくするため、わざと、あえて長文になるようにしているのである。もし、読者がいったい何を言っているのかサッパリ分からない、という感想があれば、この例は成功ということになる。
そう、ここでは「道の教え方」が問題だったのである。
道を尋ねる事を例に、一般の場合と、役所の場合とを比較するのが目的だったのである。
これを、NHK問題に置き換えてみると、まさにこれと同じ事が行われるであろう。総務所省に、NHKに対する資料を要求すると、上の四角で表した資料のようなものが、提出されることになる。法文から始まり、NHKの組織、料金体系、営業体系、受信契約状況、番組の編成、などの記述か延々と続くのである。
我々が聞きたいのは、本当のNHKの問題点、つまり、営業職員が実際にどのように受信契約しているのか、受信契約受託会社かどのように営業活動をしているか、職員の不祥事にどのように対処しているのかなどなのだ。テレビ・ラジオを含め、8チャンネルも有し、朝から晩まで番組を流し続け、また、携帯や、カーナビ、パソコン、タブレットからも受信料を取ろうとしている、高い受信料をとり、多くの子会社を持ち、裁判で弱い者をいじめている、などの諸問題なのである。
つまり、総務省の資料からNHKが抱える本当の問題点を見つけることなど、限りなく困難ということだ。総務省は、NHKを現状のままで残したいと考えている。つまり、天下り先としてNHKが組織や規模を縮小したものにしたくないのが、本音であろう。そうすると、NHKが不利になるような資料を出すわけがないのである。そこのところが分かるかどうか、疑わしいのである。
第3には、国会議員自身に関わる問題だ。
多くの国会議員の最も大きな関心ごとは、次の選挙で受かる事なのだ。これは、国会議員に限らず、選挙で選ばれるすべての地方の首長、議員にもあてはまる。
多くの国会議員にとってNHK問題は、月約1.800円、年間22,000円程支払うかどうかの問題に過ぎないといえる。国会議員の年俸は、2,100万円程だそうだ。年2,100万円、月175万円ももらっていれば、月1.800円、年間22,000円の出費など、真剣に考えるのもばかげている、と思っても、おかしくない。
また、こんなジンクスがあるそうだ。NHKの改革を掲げる議員は、選挙に勝てないというものだ。これは、ジンクスではなく、本当の事だと思う。つまり、NHKの生命線は、放送法64条1項の「受信機を設置した者は~契約しなければならない」にあるのだ、これを改革しようとする者は、組織を挙げて阻止しようとするだろう。このような状況の中では、危険を冒しても、NHK改革に臨むより、目を逸らして、見てみ見ぬふりをする政治家になるだろう。
月1,800円の問題で、自身の選挙に不利になると思われるNHKの改革に、本気で立ち向かう者がいるかどうか、このことが、NHKの改革を進める上での困難さを示している。
この状況を、いかに打破するか、結局のところ、NHK問題は、政治問題と切り離して考えることはできず、良い政治家を選ばなければならないことに、帰着する。
さて、ここまで読んでくると、八方ふさがりの状況に、気分も落ち込み、我々にいったい何が出来るのか、我々個人の小ささを思い知らされることになるかもしれない。しかし、ここに、我々がすぐにでも出来る、強烈な反撃方法がある事を忘れている。何か。
それは、受信料の不払いである。これこそ、何の、権力も持たないちっぽけな我々にすぐにでも出来る、NHKに対抗できる唯一の方法と言ってもよい。NHKの放送は利用しない、だから、利用料も払わない。誰にでも出来る、至極簡単なことだ。更に、これを組織化すれば、NHK改革はできるかもしれない。多くの人々が、組織的に受信料の不払い運動を進め、社会運動を起こすのである。それにより、その運動に賛同する国会議員を増やし、放送法64条1項の規定である、「受信機を設置した者は~契約しなければならない」を、「放送を利用する者は~契約しなければならない」と改正するのである。
なお、受信料の不払いについてはの詳しくは、「不払いのすすめ」のページで繰り広げるであろう。
引用資料
ウイキペディア フリー百科事典
上記四角で囲まれた部分には、下記より文章を引用し、編集を加えてある。
東京都 取締役 伊能忠孝